科学者のこころに訴える

アルス・フォーラム No.3 で「論文捏造、不正経理 等々、悪質な事件が学者・研究者と呼ばれる仲間の中で起っている。公共事業におけるスキャンダルと同じである」このような恥ずべき事件を起こす「こころの貧しい科学者」の出現を抑える道は「科学者仲間のこころに訴える」ことであると論じた。不正が増してきた背景を分析し、科学者のこころを貧しくする土壌がどのようにして生じてきたか考えようと、タウンミーティングを開き、それをきっかけに議論を起こそうと考えていた矢先に、とんでもないニュースが飛び込んで来た。早稲田大学・松本和子教授の事件である。
科学技術会議の議員を務めた人物である。このような貧しい心の指導者によってわれわれの研究環境を支配する科学技術行政が左右されていたのかと思うと悲しいことである。

もう一つ悲しく思うことは、事件の主役が女性だったことである。かつて、赤松文部大臣の時代に学術行政にも女性の進出を促す動きがあった。学術審議会をはじめその下部の委員会等に女性を登用したいという大臣のお考えで、適任とする女性科学者の推薦を求められたことがある。女性大臣が言い出したことなので、なにでも良いから女性をという考えに抵抗を感じたが、しかし協力をした。男性に比べて、女性は潔癖で清潔感がある。女性独特の思考様式がある。女性が進出することは、男性支配の行政の体質を変えることになると考えた。実際、女性登用の効果はいろいろと感じるところがあり、男性中心の世界からの移り変わりに期待をかけていた。しかし、この事件は女性にもこころ貧しい人が居ることを教えられた。

それにしても松本という人を推薦した人は誰であろうか? この人を科学技術会議員に選んだ人は誰であろうか? トップクラスの人事を決めるメカニズムを明朗化し、責任をはっきりさせることが望まれる。