研究所の老化現象

 1月13日と14日に「KEK 12-GeV陽子シンクロトロン- その35年の軌跡」というタイトルのシンポジウムが開かれました。我が国最初の本格的高エネルギー加速器として、多くの研究業績を挙げ人材を育成してきたシンクロトロンの運転終了を機に、35年に及ぶ歴史をふりかえる会として企画されたものでした。研究活動は東海村に建設される大強度陽子加速器J-PARCに移行され、一層の発展が期待されています。
 このシンポジウムで行った講演の中で、J-PARCへの期待と戒めという話をする為に準備した次の表に思わぬ反響があって多くの人にコピーを求められました。「人間の老化現象」と「研究所の老化現象」を対比したこの表はカピッツア教授がレニングラードにある物理工学研究所の創立50周年記念祝典(1968)で行った特別講演を要約したものです。非常に示唆に富むものなので紹介します。

   人間の老化現象    研究所の老化現象   
   老人の大食    必要以上に資金を要求   
   老廃物の蓄積    研究に参加しない所員の増加   
   老人の饒舌    質を考えずに大量の論文を作成   
   繁殖能力の喪失    人材養成能力の欠如   
   経験の過信・時代遅れ    先進的研究への感性と努力の不足   
  • カピッツア「科学・人間・組織」金子不二夫訳(みすず書房 1974)
  • 湯川秀樹先生も東北大の金属材料研究所でよく似た趣旨の講演をなさったそうですが、ご存知の方はお教え下さい。

[文責:中井浩二]